“それはまだ博物館に行く前のことだったので時間は4時頃だったと思う。
自転車に乗った少年が走ってきた。ピンクと水色の自転車に乗ってあらわれた。先にトンネルについた少年は、石に座って遅れてくる者たちを待つ。やけにさわやかな青いシャツ。
この入り口から猫はほんとうに出てくるのか。注意深くうかがう。“
“みずに浸かるボートひとつ。砂の荷物。
波が立たない程度に静かに浸かれればいい。少しでも地上の印象を振り払いたくてそんな低いところに隠れたって、あなたたちを守る堤防にはならないよ。
風はあったと思うんだけど、水面はとても静かだった。“ (本文より)
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マレビトの会『福島を上演する』(フェスティバル/トーキョー 2017 にて上演)戯曲執筆の取材として、脚本家の高橋知由が写真家の黑田菜月とともに 2017年6月に福島県(福島市ー南相馬市ーいわき市)へ出かけた。その取材旅行がきっかけとなって出来た写真本。写真は取材時に撮られたものであり、テキストは、撮影者黑田のメモを高橋とともに再構成・編集することで出来ている。
[プロフィール]
●髙橋 知由(たかはし・ともゆき)
1985年生まれ。映画、演劇の脚本家として活動。主な脚本作に『不気味なものの肌に触れる』(監督:濱口竜介)、『螺旋銀河』(監督/共同脚本:草野 なつか)など。また、映画監督の濱口竜介・野原位と結成した脚本ユニット「はたのこうぼう」のメンバー。はたのこうぼう名義の脚本作品として『ハッピーアワー』(監督:濱口竜介)がある。
●黑田 菜月(くろだ・なつき)
1988年生まれ、神奈川県出身。写真家。2013年に第8回写真「1_WALL」グランプリ受賞。映画の撮影に同行して、現場を新たな切り口で撮り下ろした写真集『ほったまるびより/その家のはなし』を制作。2015年、渋谷の東塔堂にて個展「ファンシー・フライト」を開催、同タイトルの冊子を制作。2017年秋には東京・大阪ニコンサロンにて個展「私の腕を掴む人」を開催。http://kurodanatsuki.com
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ここにはたくさんの馬が放たれるそうだ
2017年9月20日発行
文 高橋知由・黑田菜月
写真 黑田菜月
デザイン 阿部航太・村上亜沙美 (Kite)
サイズ/仕様 148×105mm/ソフトカバー
ページ数 116P
定価 ¥1800(税別)
¥1,980